「姉上もそろそろいい男を見つけないと」
「わたしよりも強い男がいればね」

 キャロルは、ヴィクターの苦笑交じりの嫌味をピシャリと封じてしまった。

(たしかに、彼女より強い男性となるとヴィクターくらいよね)

 キャロルの結婚までの道のりもまた、とてつもなく険しいかもしれない。

「クズ皇帝とその正妃の前でサエとの関係を告げてから、嘘みたいに照れ臭さや矜持がなくなった。だから、人前でもサエとこうして堂々と仲良く出来るし、彼女のことを褒めたりのろけたり出来る」

 そう。ヴィクター自身が言ったように、彼はすっかりかわってしまった。それこそ、駐屯地にいるすべての人が力いっぱいひいてしまうほど、人前でわたしを愛してはばからない。

 そのあまりのかわりようと情熱に、わたし自身もひいてしまうときがある。

 もしかしたら、彼を激変させたのもまたわたしの力の一端かもしれない。