「だまれ。あれは侵略行為だ。すくなくとも、わがオーディントン国ではそう受け取る。一度は許したが、二度目は許さぬ。しかも、二度目はルビーを奪えと命じていたそうだな。貴様らは、おれのことを『盗賊の末裔』だとか『野獣の王』だとか呼んで蔑んでいるが、貴様の方がよほど悪党だ。ぜったいに見過ごさぬ。ましてや許すことなどな。貴様の軍や官僚や貴族たちは、おれに恭順を誓っている。元皇帝である貴様にではなく、だ」
「ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ。違う。おれは、ひとえに帝国民の為に、飢饉や災害で苦しむ帝国民の為に……」
「だまれと言ったはずだが? 貴様の戯言などききたくはない。すでに貴様と貴様の正妃の運命は決している。それ以上恥をさらさぬことだ。ああ、そうだ。クズきわまりない貴様にひとつだけ礼を言っておこう。最愛の妻を、最高のレディを生贄として贈ってくれたことだ」