そんな彼らに申し訳ないと思った。

 なにせ彼らの愛するレディを、わたしの実力ではない方法で負かしてしまったのだから。

 キャロルのお蔭である。彼女の緻密な計算による作戦が、わたしを料理に導いてくれたのである。

 彼女は、双子の姉妹たちが兵士たちと勝負をすると見越していた。実際、彼女たちは王都でもレッドグローブ公爵家の屋敷に剣士や兵士たちを呼び寄せては、腕試しの勝負しているらしい。

 キャロルは、兵士たちにわざと負けるように、しかもあきらかに実力差があるように見えるよう無様に負けるよう頼んでいたらしい。

 勘違いした彼女たちは、すっかり慢心していた。そして、わたしもまたキャロルに指示されていた。怖がっているよう、あるいは手も足も出ないような様子でひたすら逃げ回るようにと。

 だから、わたしは試合場内のスペースいっぱいを使って逃げまくった。