キャロルに頼めばヴィクターに会えることはわかっている。キャロルなら脅したりすかしたり、あるいはもっと強引な手段を用いて絶対に会わせてくれる。

 そのことは重々承知している。

 だけど、彼女を利用したくなかった。

 自分の力で「おかえりなさい」を伝えたかった。せめてみずからの力で伝えたい。

 そんなくだらない意地が、キャロルの存在を否定してしまったのである。