「ふんっ! 客人になにかあったらおれのせいになる。ゆえに、せいぜい逃げ回ることだ。これだけ小さければ、小回りだけはきくだろうからな。まともに戦えるわけがないのだ」

 ヴィクターは、鼻を鳴らした。

『うわあああああっ! 彼女のこの凛とした表情。めちゃくちゃカッコ可愛い。ああ、彼女を抱きしめて頬ずりしたい。このまま部屋に連れて帰りたい。ダメだダメだ。おれは、なんというやましいことを考えてしまったのだ。そんな変態親父みたいなことをすれば、彼女に軽蔑されてしまう。そんなことより、彼女には戦ってほしくない。傷ついて欲しくない。おれの腕の中なら安全なのに。くそっ! 姉上の気ままに振り回されるしかないのか? まぁたしかに姉上の言う通り、くだらぬ慣習はおれがなくせばいいだけのことなのだが。それなのに、おれにはその勇気がない。しょせんおれは、将軍であって王の器ではないということか? おれは、自分が情けない』