「な、なんてこと」

 馬車は、静かに走り続けている。

(腹の虫が鳴ったの、きこえたかしら? きこえなかったわよね? 自分の耳には大きくきこえただけよね?)

 ヒヤヒヤしつつ、窓の向こうの彼らをそっとうかがった。

「よかった。いまの腹の虫の騒ぎようなら、そのバスケットに入っている量ならば余裕で食えそうですね」
「ああ、たしかに。レディ、もっと早く声をかければよかったですね。さぁ、どうぞ。とりあえず食って下さい」

 恥ずかしさで顔から火が出そう。

 だけど、急激に減ってきたお腹をこれ以上抑えることは出来ない。

「いただきます」

 素直にいただくことにした。

 そして、一心不乱に食べた。