翌日から、なだという甘いことはなかった。

 それどころか、ヴィクターに暇乞いをして執務室を一歩出た瞬間、キャロルに「さっそく始めましょう」と誘われてしまった。

 訂正。命じられてしまった。

 わたしは、これまで運動らしきことをしたことがない。他の多くのレディ同様、健康の為に皇宮の森をのんびり散策しては、「あー、よく運動したわ」などと満足していた。ほんの少し歩きまわっただけで、めちゃくちゃ運動したと勘違いする。まさしくアレである。

 正直なところ、キャロルの特訓についていける自信がなかった。逆に体力、気力ともにすぐに限界がきてしまうだろう、とその点では自信があった。

 しかし、キャロルは急がなかった。彼女は、ド素人のわたしでもついていけるよう、ちゃんとペース配分や難易度を考えてくれていたのである。