いまはもうヴィクターと執務室で会うときに待たされることはない。

 待たされたのは、ここに来て初めてのときだけだった。あのときは、控えの間ひとりで待っていて不安や恐怖でどうにかなりそうだった。

 いつものようにそのまま控えの間を素通りし、扉をノックして入室の許可と同時に中に入った。

 ヴィクターは、執務机の向こうであいかわらず強面巨躯に不愛想と不機嫌さを漂わせている。