「ほんと美味そうですよね」
「においがたまらない」

 二人は、焼き上がったばかりの天板上のマドレーヌの前から動こうとしない。

「パーシー、チャーリー、味見をどうぞ。そうだわ。せっかくだから、ヴィクター様にも持って行きましょう」
「では、その前に毒見を」
「おいっ、チャーリー。毒見だなんて失礼なことを言うな。ただのつまみ食いじゃないか」
「パーシー、そうだった。レディ、すみません。失言でした。だけど、陛下より前に食うのは悪いかな?」
「いいのですよ、お二人とも。毒見と称して食べてみて下さい。大義名分があれば食べやすいでしょう? もちろん、毒なんて入っていませんけどね」

 勧めると、二人はうれしそうに天板上のマドレーヌを手に取った。