「う……ん。美味しい。とっても美味しいです」

 カカオのほのかな苦さと甘さがちょうどいい具合に混じり合っている。生地はしっとりしているかと思いきやサクサク感もある。ケーキ上と間に挟まれているホイップが彩りとアクセントを添えている。

 これまでスイーツに興味を持たなかった。いいえ。持てなかった。

 祖国の皇宮で、侍女たちは非番に帝都にスイーツを食べに行ったりしていたけれど、わたしは一度もない。皇宮の料理人たちは、スイーツを作ってくれるようなことはなかった。もちろん、わたしがお願いすれば作ってくれたかもしれないけれど、彼らに対して気を遣っていたのでお願いすることが出来なかった。

 侍女たちが仕事中に雑談しているのをききながら、いろいろ想像するしかなかった。