(ああ、なるほど。わたしがぶつかったふりをしているのね)

 そんなことをしなくても、わたしはすでに負け犬なのに。

 そんなことを思っている間でも、ふわりと宙に浮いた体が重力に従って落下していく。

「ああ、今日は人生最良の日だわ」

 声に出して言ってみたつもりだったけれど、声はでなかったかもしれない。

 そうつぶやいたとき、視界が真っ暗になった。