「今の静流は、ちょっと怖い。だから、本当はこんな事言いたくない、けど……」

　私のせいで静流が変な方向に行くのは、絶対ダメ。

　原因が私にあると言うなら、考えがある。

　私だって、こんな強引な手は使いたくない。

　静流のこと好きだし、片時も離れたくない。

　……だけど、メリハリをつけなきゃ。

「ごめん。ちょっとだけ……距離、取ろう。」

「……っ。」

　絶望したような、見るだけで苦しくなる表情。

　静流はそんな表情へとたちまち変わる。

　力も抜けてしまっているようで、その隙を突いて私は逃げ出した。

　――逃げ、を取ってしまった。

　これが最善の方法になるかは分からない。もしかしたら、最悪な手段を選んでしまったかもしれない。

　……一種の賭けかもしれない。良い方向に傾くか、悪い方向に傾くか。

「ほんとに……ごめん。」

　口から出た言葉は、自分のものとは思えないほど情けないものだった。