甘くて優しい青春恋物語 ~嫉妬にまみれた体育祭は取り合い勃発!?~

 でも、声が出ない。何で声が出ないかなんて、知った事じゃない。

 静流は私の気持ちを察したのか、はたまた無視したのか、否応なしに抱きしめてくる。

 さっきよりも強く、潰れそうなくらい。

「あんなぽっと出の奴に、香取られたくないんだけど。」

 耳元で囁かれたその言葉は、危ない薬みたい。

 私を嫌な方向に堕としてきそうで、気付けば静流の胸板を押していた。

「……静流、嫉妬したって、こと?」

「それ以外に何があるって言うんだ。まぁ、嫉妬って言葉じゃ片付けられないだろうがな。」

 またもやビクッと、私は体を跳ねさせた。

 さっきから静流の言葉には、重たい何かが備わっているみたい。

 それに加え、ぼそっとこう呟いた静流。

「あの男が香のこと見られないように、叩き潰そうかな。」

 ……ひぇ。

 恐ろしい、って初めて思った。

 今の静流の顔は、とてつもなく怖い。悪い顔じゃない、怖い顔だ。

 静流って……こ、こんなに嫉妬深かったっけ?

 そう思ってしまうほどに、私は今の静流に怯えてしまっていた。