えぇ……大丈夫だろうか、この人。

 普通、彼氏持ちだって知ったら諦めるよね? いや、諦めが悪すぎる人なのかもしれない。

 ……絶対そうでしょ。

 何やらこれ以上関わっていると余計に面倒な事になりそうだと察し、急いで踵を返す。

「ここで失礼します。フィナンシェ、ありがとうございます。だけれど……本当に、無理ですので。」

 ごめんなさい、はあえて言わない。

 一度似たような言葉は言ってるんだからそれでいいと思ったし、こっちのほうが何かと都合がいい。

 謝罪じゃなくて、無理と言ったのはもちろん意味がある。

 このほうが……気持ちを無下にする女だって印象を貼り付ける事ができて、もう関わっては来ないだろうと考えたから。

 実際、そうであってほしいけど。

 私は振り返る事もせず、校門を出て帰路に着く。

 その際、佐納さんが声をかけてくる事はなかった。