betrayal~元彼御曹司との不倫~

「本当だな。俺って最悪」

「ですね」

「十和子と真田の関係も壊して。
一体、俺は何がしたかったんだろ」

零斗と私が別れた事は、この人のせいではないのかもしれない。
中村春馬が現れた事がきっかけだったとしても。

私と零斗が、弱くて流されてしまったから。

「美怜さんは、このままでいいのでしょうか?
美怜さんの彼氏も…」

美怜さんも本当は愛する人と夫婦になりたいはず。
その彼氏だって、端からみたらただの愛人や不倫相手で辛いはず。

「さぁ…。
もし、美怜が俺と別れて、親友…隼人って名前なんだけど、隼人と一緒になりたいってなら、
俺に出来る事なら協力するけど。
美怜の親、うちの親以上にややこしい感じだから。
隼人の事知られたら、美怜の親、隼人だけじゃなく隼人の家族迄を社会的に抹殺しかねない」

「社会的に抹殺って、本当ですか?」

「しかねない、ってだけ。
でも、それくらい大事なんだよ」

「そうなのですね…」

関係のない私が口を挟む余地もなさそうだな。

美怜さんと中村春馬の偽装結婚の話を聞いてから、美怜さんも本当にその彼の事を好きなら、両親になんで逆らってでもその彼氏との事を認めて貰おうと少しでもしなかったんだろう、って思ったけど。
私が思っていた以上に、それは難しい問題だったのか。

今思うと、昔、中村春馬が私との交際を会社の人達に内緒にしようと言ったのも、美怜さんと同じような理由なのかもしれない。
社内で私達の交際が公になれば、この人の父親の社長の耳にも入るかもしれない。

そうなると、私にも何かしら圧力が掛かったり…。

「大阪行っても、たまには俺の事を思い出して」

「絶対に、思い出さないです」

そう笑い合って、その夜も沢山お酒を飲んだ。

大阪に行ってから、たまにどころかいつも中村春馬の事を思い出していた。
私からもそうだけど、向こうからも連絡なんてないのに。