昼休み。
零斗は営業で出ていて、私は一人会社から出てコンビニへと行く。
買ったのはおにぎり二つで、自分のデスクで食べるつもりだったけど、なんとなく会社に戻るのが嫌で、近くの公園に行こう、と思った。
会社が居心地悪い。

今日、出勤すると三浦さんは一身上の都合で辞めていた。
派遣会社の担当の男性が、それを伝えに中村春馬のデスクに来ていて、会話が少し聞こえて来た。
三浦さんの母親の体調が悪くてどうとか、で。
何も知らなかったらそうなんだ、って思っただろうけど。
きっと、それは嘘で。
零斗との事があって、辞めたのだろう。

「…絶対、瞳の方がいいのに」

廊下ですれ違い様に、三浦さんと仲が良かった同じ派遣の小林さんにそう言われた。
三浦さんの下の名前は、瞳。

きっと、小林さんだけじゃなくみんな、私と零斗と三浦さんの三角関係を知っているんだろうな。
知らなくても、これから噂として広がって。
もしかしたら、中村春馬と私の不倫も知られて…。
色々考えると、本当に会社に居たくない!

会社のビルの前、引き返そうと踵を返した時。

「あ、本田十和子さん?」

目の前の女性が私の名前を呼んだ。
知らない人に名を呼ばれた事もそうだけど、その女性が目を見張る程の美人で驚いた。

「えっと…」

知り合いだろうか?けど、こんな美人一度会ったら忘れない。
誰?