〇原宿家・原宿家二階、原宿なぎさの部屋(朝)
  窓がある。カーテンがしまっている。勉強机がある。本棚がある。女子サッカーのポスターが貼ってある。
  原宿なぎさ(16歳)、ベッドに寝ている。淡い茶髪のショートカット。目は大きく茶色。背は小柄で細い。パジャマ姿。布団をはねのけている。寝相が悪い。
原宿さくら(40歳)の声「あやめ、なぎさ」
  なぎさ、目をこすって起きる。
なぎさ「(大口を開けて)ふわあ」
  なぎさ、ベッドから立つ。窓の前に立つ。カーテンを開ける。日が差す。
なぎさ「うわ」
なぎさ「今日もあっついなあ」
なぎさ、モノローグ「私、原宿なぎさ、16歳。花の女子高生」
  なぎさ、伸びをする。
なぎさ「(大口を開けて)ふわあ」
  なぎさ、部屋の戸を開ける。ガチャ。

〇同・廊下
  なぎさ、部屋から出てくる。
  原宿あやめ(23歳)の顔。ピンク色の長い髪。ピンク色の大きい目。あやめ、おでこをおさえている。あやめ、なぎさを見る。あやめ、びっくりする。
なぎさ「え」
あやめ「なあんだ、なぎさかあ」
なぎさ「なんだって何よ」
あやめ「それが・・・・・・、ゲームのやりすぎでモノが擬人化してイケメンに見えちゃうのよ」
なぎさ、モノローグ「私のお姉ちゃん、原宿あやめ、23歳。OLをしている。お姉ちゃんは恋愛ゲーム「きゅんきゅんラブきゅん💛」にはまっている」
なぎさ「ははは、私までイケメンに?」
あやめ「なぎさはボーイッシュだから、かわいい系の子に見えた」
なぎさ「はははは、そうなんだ」
なぎさ、モノローグ「私はボーイッシュでよく男の子っぽいといわれる」
なぎさ、モノローグ「私は中学の時女子サッカーをしていたし、女子から告られたりもした」

〇同・一階階段下
  原宿さくら、ピンク色のふわっとした長い髪、ピンク色の大きい目。エプロン姿。
さくら「あやめ、なぎさ、何してるのお」

〇同・二階・廊下
なぎさ「ああ、お母さん」
なぎさ、モノローグ「お母さん、原宿さくら40歳、とてもかわいい主婦だ」
あやめ「ああ、今行くから」

〇同・階段
  なぎさ、あやめ、階段を降りる。

〇同・リビング
  テレビがついている。テーブルがあり、原宿勝(43歳)会社員がご飯を食べている。さくら、テーブルについている。あやめ、現れる。
あやめ「ああ」
なぎさ「どうしたお姉ちゃん」
  あやめ、勝を指さしている。
なぎさ「お姉ちゃん、もしかして」
あやめ「あそこにもイケメンが・・・・・・」
勝「今更何いってんだ、そんなの生まれた時から知ってるだろう」
なぎさ、モノローグ「原宿勝、43歳、私のお父さん。一流企業の課長だが、さえない」
なぎさ、モノローグ「どうやらお姉ちゃんはお父さんがイケメンにみえちゃってるらしい。ああ、こりゃ重度だ」
さくら「あやめー、またゲームで夜更かししたの。そんなんだからありえない幻覚が見えるのよ」
勝「か、かあさん・・・」
あやめ「えええええええ、お、お父さんだったのお・・・・・!!!!」
  あやめ、目をこすり、勝を見る。
あやめ「げええええええええええ」
勝「おいおい、なんだよ二人してえ」
なぎさ「はははははは」
  なぎさ、テーブルにつく。あやめ、テーブルにつく。なぎさ、あやめ、ご飯を食べる。
なぎさ、モノローグ「私は平凡な家庭で育った。でも、私には一つ普通じゃないことがあった。それは「なぎさ」というこの名前のことだ」
なぎさ、モノローグ「それはお母さんが私を生んだ時のことだった」
なぎさ、モノローグ「お母さんは道端で産気づいた。そのとき、赤い髪の外国人女性が助けてくれたという」
なぎさ、モノローグ「それは6月の暑い日だったそうだ」

〇(回想)公道。(昼)
  若いころの原宿さくら、24歳、道で産気づく。赤いウエーブヘアの長い髪の女性が現れる。20代くらい。
赤い髪の女性「大丈夫ですか」
さくら「う、生まれる」
  タクシーが通りかかる。赤い髪の女性、手をあげる。タクシーが止まる。女性がさくらの肩をかつぎ、タクシーに乗せる。女性もタクシーに乗る。
赤い髪の女性「産気づいてる。とにかく病院へ」
タクシーの男性、40代くらい「わかりました」
  タクシー出発する。

〇タクシー内
さくら「もうだめ、生まれる」
赤い髪の女性「タクシー、とめて」
タクシーの男性「は、はい」
  タクシー、止まる。
  赤い髪の女性、さくらの前に来る。
赤い髪の女性「ここでやるしかない」
タクシーの男性「あなた、医者か看護師ですか」
赤い髪の女性「いえ」
タクシーの男性「じゃあ、助産師」
赤い髪の女性「違うわ」
タクシーの男性「えええええ、無理ですよお」
赤い髪の女性「(あわてて)あ、ああ、助産師みたいなものよ」
  タクシーの男性ほっとする。
タクシーの男性「よかった」
  女性が赤ちゃんを抱きあげた。
赤い髪の女性「ほら」
  さくら笑顔。
赤い髪の女性「女の子よ」
さくら「そうなんです」
  赤い髪の女性、赤ちゃんを抱いている。
赤い髪の女性「ねえ、お願いがあるの?」
さくら「なんでも」
赤い髪の女性「このこ「なぎさ」と名付けてほしいの」
さくら「ああ。名前決めてたけど、あなたは恩人だからそう名付けるわ」
赤い髪の女性「私の国の王が好きな日本語なんだ」
さくら「へー」
(回想終了)
なぎさ、モノローグ「私が生まれるのを助けてくれた人に「なぎさ」と名付けられたのだ」
なぎさ、モノローグ「赤い髪の外国人は自分の国の王が好きな日本語だといった、とお母さんからきいた」
なぎさ、モノローグ「赤い髪の外国人女性が助けてくれなかったら、あなたは生まれてないかもしれないのよ、とお母さんは言う。だからその女性に感謝しなさい、と言われている」
なぎさ、モノローグ「その赤い髪の外国人女性は、一体どんな人なんだろう。その人は助産師みたいなものだ、と言ったそうだ。王様の召使か、何かなのかもしれない。きっときれいな人だ」

〇原宿家・リビング
  なぎさ、物思いにうけっている。
さくら「なぎさあ、ぼーっとしてないで、早く食べなさい」
なぎさ「あ、はいはい」
  なぎさ、ご飯を食べる。
なぎさ、モノローグ「ああ、今日はどんな一日になるんだろう」