泣きっ面に恋々!─泣き虫な身代わり花嫁と、泣き顔フェチな純真王子の恋々な結婚事情─



この箱の中に糞尿を垂れ流し異臭にまみれたまま、最後には餓死だ。ユア王女はあまりに惨い仕打ちにゾッとした。


窮地に立たされたユア王女は苦し紛れに口を動かす。


「出しなさいよ!!この人でなし!」


キーキー叫び出したユア王女の声はジオに届かない。ジオの紫色の瞳には、愛しいステラしか映らない。


「俺はステラを何からも守りたい。そのためには優しいだけじゃダメだ。

人間の顔した人間じゃない奴らとは交わっちゃいけない。

そういう守り方をしないと、またステラが泣かされてしまう。

ステラが泣くのは嬉しい時だけでいい」


ユア王女の背後に、死の足音が大きく鳴った。



光の消えた紫の双眼のジオがユア王女を見つめる。