蓮が何かを持って戻って来る。
心菜は立ち上がり、どうにかして涙を止めなければと上を見上げる。
「心菜、これ君が貸してくれたハンカチ。
返さなきゃと思いながら、ずっと持ち歩いてたんだ。」
私のタオルハンカチ…
捨ててくれても良かったのに、ずっと持ち歩いてくれてたの?
そう思うだけで、また涙が溢れてしまう。
そのハンカチで蓮が心菜の頬を拭く。
「困ったな。…泣かせてばかりだ。」
蓮がそう言うから心菜は首を横に振り、
「蓮さんの、せいじゃない…です。ごめんなさい…涙腺緩んじゃって…。」
「ごめん、抱きしめてもいいか?」
えっ?と心菜が思うと同時に抱きしめられる。
心臓が忙しなくドキンドキンと脈打つ。
パニックになり思わず、
「…私、蓮さんが、好きです…
だけど…それは、許されないから…蓮さんは
雲の上の人、ですから……。」
あっ…
心の声が漏れ出てしまった事に心菜は気付く。
どうしよ…隠さなきゃいけない感情を口にしてしまった…
どうしよう…どうしよう…
頭はもっとパニック状態だ。
蓮がぎゅっとさっきより強く抱きしめてくる。
「良かった…。」
「あの、違うんです。えっと、人間的にって言うか…えっと、なんて言うか…。」
心菜は慌ててそう取り繕う。
必死で蓮の引き締まった胸を押して腕から逃れようとするが、とても力で敵うわけが無く、
「もういい、観念しろ。
何も考えなくていい。俺が好きか嫌いかどっちだ?」
そんなの…ずるい…
「心菜。どっち?」
「そんなの…ずるいです。
……好きに決まってるじゃないですか。」
心菜は蓮を見上げて精一杯睨み付け威嚇する。のに…
唇に柔らかい感触を感じて驚き目を見開く。
えっ…キスされてる……
私…蓮さんと…キスしてる…
蓮は優しく何度も啄む様に、心菜の心を溶かすように…キスをする。



