初めて北條蓮に会ったのは、俺が所属する事務所の会議室だった。

大学を卒業したてのイケすかないイケメン。
第一印象はそんな感じだ。

履歴書を見て再度イラっとした。

高学歴の上に御曹司。

何なんだ。
世の中は不平等だと叫びたくなる。

音楽を聴くまでは、こんな奴とは組めないとたかを括っていた。

「彼、見た目が良いだけの御曹司でしょ。
この世界でやってけますか?」
皮肉も込めて社長に言い放った。

「彼の作ったデモテープ聴いてみてから言ってくれ。」
ニヤッと笑った社長の顔が忘れられない。

なんなんだ、神は二物を与えずじゃ無いのか。人知れず悪態を吐く。

俺はそれまで8年努力し続けてきた。
いつかデビューできる日を夢見て、この会社で働きながら書き続けてきたのに…。

コイツはいとも簡単にそれを飛び越えていく。

聞けば初めて書いた曲だと言うから、天才か!!と叫びたくなった。

才能があるって言うのはこう言う奴の事を言うんだな。
そう思いキッパリ夢を諦めた。

そんな俺に、社長がマネージャーになれと言った。

この蓮と言う男、才能も見た目も申し分無いのに、情熱だけが足りないと言う。

確かに淡々と話すその言葉に熱は感じられ無い。何のために曲を書いたのかと聞けば、生きるためだと言う。

生きるだけなら親から金でもせびればいいだろ御曹司が!!
そう、皮肉を言いそうになったが堪えた。

そして、無理なら他を当たると言う。

こんな大物薄々逃すものかと、社長と2人慌てて止めた。