「5時に起こせば良いですか?
寝やすいようにちょっとだけ照明落としますね。」
こくんと頷く蓮を確認してから、心菜は風呂場に消えて行く。


蓮は髪をドライヤーで乾かしながら、人知れずホッとしていた。

シャワーを浴びて風呂から出てみれば、用意された男物のスウェットズボン。

心菜に男の気配はこれっぽっちもなかったから、気にしてはいなかったけど…。

もしかして、退院してからこの短期間の間に…
そう思うと、あの、作業療法士の顔までチラつき始める。

心菜がいつか誰かのものになる事だってこの先いくらでもあるだろう。

俺にそれを止める権利はない。

それでも苛立ち、本人に強く聞いてしまう。

兄の物だと聞いてどれだけホッとしたか、心菜は気付きもしないだろう。

自分が変な気を起こす前に早く寝てしまおう。そう蓮は思ってベッドに潜る。

心菜のシングルベッドは小さくて、両足を伸ばしては寝れないけれど、彼女の気配のあるこの部屋は妙に落ち着く。

ベッド横の犬のぬいぐるみでさえ可愛く思えてしまい、無下に足蹴り出来ないとそっとソファに移す始末だ。

このまま朝が来なければいいのにと思ってしまう。

そうだ…俺はずっと罰を受けながらこの先も1人生きて行くんだ。
その罰さえも愛しいと思ってしまう。