さっきはあんなに動じない感じだったのに、今は少しだけ表情が読める。
心菜はそれだけで、嬉しくなってフッと笑って、ことの経緯を話し出す。
「実家で、テレビを観ていたんです。
実家はここから車で10分くらいなんですけど…。
そしたり歌番組に蓮さんが出ていて…
顔色が、悪そうに見えて…あの、その…体調悪いのかなって。
偏頭痛で頭痛いのかなって思ったら、居ても立っても居られなくて…。」
そこで、心菜は息を整える。
蓮はうんと頷きながら、心菜が話し出すのを待っていてくれている。
「それで…お勧めの頭痛薬を持って急いで家を出たんですけど…よく考えたら、連絡先も知りませんし、会えるわけないですよね。」
心菜は苦笑いして前を向く。
「分かったよ。
丁度、車道を出て真っ直ぐな所にいたから。」
蓮が静かに話し出す。
「心菜だって直ぐ気付いた。
…始めは幻でも見ているのかと思って…自分の目が信じられなかった。
だけど…もしかしならと思って、赤信号で車から飛び降りて確認しに来てみたんだ。」
フッと笑う蓮は嬉しそうに見えるから、心菜もホッとして笑う。
「マネージャーさん大丈夫ですか?
突然飛び出したりして、びっくりしたんじゃないでしょうか?」
「大丈夫では…無いかもしれない。
9時45分の新幹線に乗る予定だったから。」
ハハッと何故か蓮が笑う。
心菜は時計を見てびっくりする。
「えっ⁉︎今、30分ですよ?
大丈ばないです…えっ?間に合いますか?」
心菜は慌てて立ち上がり、えっえっ⁉︎
と周りを見渡す。
その手を取って、蓮は引っ張りもう一度ベンチに心菜を座らせる。
「落ち着いて。
コンサートは明日の夕方だ。大事を取って早めに行くだけだから問題無い。」
「えっ?でも…マネージャーさん待ってますよね?」
心菜は事の事態に驚き、どうしょうと泣きそうになる。
蓮はそんな心菜を安心させるように、頭をポンポンと撫ぜ、
「俺、スマホも何もかも車に置いてきたんだ。ちょっと貸してくれないか?」
「あっ!はい。どうぞ使って下さい。」
心菜のスマホを使い、蓮は何処に電話をかけている。
「もしもし…悪いけど、ちょっと今夜は新幹線に間に合いそうも無い。明日始発で行くから……。」
マネージャーが何かいろいろ言っているらしく、叱られているのかと思うと、心菜は居た堪れない気持ちになる。
しばらく話し合った後、蓮はスマホを切り、
ありがとうと心菜に返す。



