誰にも言えない秘密の恋をしました       (この唄を君に捧ぐ)

夕方、電車に乗って祖父の家に行く。

飼い犬のコロと一緒に出迎えてくれた祖父は元気そうで安心した。

祖父と一緒に持って来た惣菜と、お隣さんから頂いた魚を焼いて夕飯にする。

「心菜が帰って来ると、なんだか家がパァッと明るくなったようで嬉しいなぁ。」

祖父はそんな事を言いながら、早くもビール缶を開け一杯飲み始める。

「最近は、1人で夕飯食べてるの?
お兄ちゃんは帰り遅いの?」

心菜は祖父が寂しくしているのかと心配になってしまう。

「一心は最近忙しそうだからなぁ。
1人の時はマサさんちでチビチビやったりしてるから、心菜が心配しなくても大丈夫だ。
おじいちゃん最近、スポーツ初めてな。
その仲間とも仲良くやってるから、毎日充実してるぞ。」

「スポーツって何?」

「ボッチャって言ってな。どれだけ的にボールを近付けるかを競う競技で……。」

祖父のボッチャの説明はしばらく続き、白熱していく。
仕事を引退しても、楽しそうな毎日で良かったと安心した。

「じいちゃんもまだまだ元気でいないといけないからな。心菜達に迷惑はかけられん。」
そう言って、終始楽しい夕食が続いた。


8時になって、後片付けも終わり少しリビングで寛いでから帰ろうかなと、心菜は何気なくテレビを見る。

リモコンで番組をポチポチと変えていると、音楽番組で手が止まる。

あっ…と思う。

蓮さんが珍しくテレビに出ている。
しかも生放送なんだ。

訳も分からず何故かドキドキと胸が高鳴る。

ただのファンの私が、こんな緊張する事ないのに…自分に苦笑いしてしまう。

隣を見ると、祖父がお酒を飲んで良い気分でゴロ寝中だ。

画面に映る蓮さんはいつものクールなポーカーフィスは崩さない。

…だけど…なんだか顔色悪そう。
メイクのせい?


先週、偶然にも仕事の忙しい最中に、蓮さんを見かけた。

すれ違ったとでも言うべきだろうか…。

その日は急患が立て続けに入って来た為、医師が足りず、脳外科から至急援助をお願いした。
たまたま蓮さんの担当医師だった。

快く引き受けてくれたので、しばらく応急処置をして指示を仰いでいた。

そしたら診察予定のVIPが来たと内線が入ったから、バタバタと慌ただしく引き渡しする事になる。

頭部の怪我の場合、見えない怪我や後から来る重症も多いから神経を使う。

ちょっとした事も命に関わる。

細かいとこまで指示を仰ぎたくて、歩きながら指示をもらう事にした。
普段は行かない外来受診の診察室まで付いて行く。

まさか、蓮さんがそこにいるとは思わなかった。

帰り際に気付いて一瞬固まり、見入ってしまった。