信じられない…と、心菜は思う。
誰もが知っている有名人で、その曲で人々を魅了してやまない。
カッコ良くて、完璧な人なのに…。
「蓮さんは凄い人です。
持って生まれた才能は蓮さんの物です。
決して与えられただけの物では無いと思います。もっともっと、輝いていける人だから…。」
心菜は我慢出来ずに涙が一雫頬を伝う。
蓮はそれを見て、まるで自分が傷付けたような気がして心が痛い。
「心菜、泣かなくて良い。
悪いのは全部俺だから。
父が…心菜に手切れ金を渡そうとした事、申し訳なかった。」
蓮は真摯に、心菜に頭をもう一度下げて謝罪する。
「心菜は…受け取らなかった。
だから、まだ俺には希望があると思ってここに来たんだ。」
心菜は戸惑う。
ついさっきまで、一人で生きて行こうと思ってたのだ。何て返事をしたらいいか分からないでいる。
「心菜、一つだけ教えて欲しい。
君が、ずっと守ってくれているのは…俺の子なんだろ?」
ハッとして蓮を見る。
無意識に手をお腹に当てていた。
知ってるんだ…いつから⁉︎
…いつから気付いて?
「心菜はその子を守る為に俺から離れたんだろ?」
「違います!」
心菜は咄嗟にそう言ってしまう。
だって、ずっと隠さなければと、守らなければと思ってきたから…。
蓮は優しい口調を変えず、
「もしも、青目の子が生まれて来たとしても心菜が産む子は愛せる自信がある。
そう思ったから、心菜を迎えに来たんだ。」
蓮が一歩、心菜に近付く。
「…違います…。」
青い目の子なんて生まれて来る訳が無い。
そう思い、手をぎゅっと握り締める。
「分かっている。
俺の子でしか無いに決まっている。
父から守ろうと思って逃げてくれたんだろ。」
そう言って心菜を優しく抱きしめる。
その途端、心菜の目から涙がポロポロと流れ落ちる。
「うっ…うっ…、うっ…。」
止めようとすればするほど、嗚咽になって止められ無くなってしまった。
しばらくそのまま抱きしめられる。
その間、蓮は心菜の背中を優しく撫ぜ、何度もありがとうと言う。
「心菜、あまり泣かない方が良い。お腹の子がびっくりするだろ?」
蓮はなかなか泣き止まない心菜が心配になってくる。
「ああ、そう言えば、俺の母はイギリス人と日本人のハーフなんだ。だからもしかしたら、隔世遺伝で青い目の子だって産まれて来るかもしれない。
楽しみだな。俺にも抱かせてくれるだろうか?」
戯けたようにそう言って、心菜の涙を止めようとする。
ヒックヒックと肩を揺らしながらも少し落ちついてきたようだ。
蓮はそっと離れ、ポケットから取り出したハンカチで、心菜の頬に流れた涙を拭う。
目を真っ赤にしながら、それでも意を決したように、心菜が蓮を見上げる。
「この子は…蓮さんの子です。」
「…ありがとう。心菜…。」
今度は蓮が感無量になる。



