誰にも言えない秘密の恋をしました       (この唄を君に捧ぐ)


2人共、溢れ出す気持ちをどう言葉にするべきか迷う。

口を開いたのは心菜が先だった。

「蓮さん…ごめんなさい。
何も言わずに出て来てしまって…
…怒って、ますよね?」

恐る恐るそう聞くと、

「怒ってなんかいない。
…俺のせいだ。
俺が、家の事を伝える事が出来ないでいた。
辛い思いをさせて申し訳なかった。」

そう言って、蓮が深々と頭を下げる。

心菜は驚き頭をブンブンと横に振り、

「辞めて下さい。蓮さんのせいじゃ無い。
私が…私が怖くなって…勝手に逃げ出したんです。」
今にも泣きそうな声で言う。

蓮が頭を上げ、もう一度心菜を見つめる。

「違う。不甲斐ない俺のせいだ。
心菜は何も悪く無い。居場所を知って、直ぐに会いに来たかったけど、心菜の不安を取り除くまではと、なかなか来る事が出来なかった。」

「私の事、なんて忘れて…幸せになって、欲しかったんです。」

「忘れられる訳無いだろ。
心菜がいなくてどうやって幸せになればいいんだ。」
蓮は切実な思いを露とする。

「アイツが、中山麻里奈が言った事は全部気にしなくていい。
アイツとは家を出た時に縁を切ったんだ。
俺は心菜しか愛せない。心菜がいなければ幸せになんてなれないんだ。
両親の事も仕事の事も心配しなくていい。もう全て解決した。」

蓮は静かに淡々と話すが、瞳は真剣で怖いくらいだ。

「…お母様のご病気は?」
心菜が1番心配していた事を聞く。

「大丈夫だ。手術をして腫瘍は全部取り除いた。転移もなかったから、今は抗がん剤治療をして自宅療養している。」

「良かった…。」
蓮さんが説得してくれたんだ。
心菜は心底ホッとした。

「父とは何度も話し合って、お互い納得する条件で和解した。20年後に継いでやっても良いと伝えた。だけど、一つ条件を付けさせてもらった。」

「条件…?」

「俺がもし稼業を継ぐ時には、必ず心菜が隣にいると言う条件だ。」

えっ…私!?
心菜は驚き、動揺する。

「私は…私は蓮さんに…相応しく無いん…。」
今までずっと思っていた事を口にしようとすると…

「俺は、俺が心菜には相応しく無いと思っていた。」

蓮が心菜が話すのを被せるように言ってきて、ハッとして心菜は目を見張る。

「俺は、親から逃げて飛び出した所で夢も無く、ただ淡々と計算高く、親に与えられた能力で、ここまで来たんだ…。
それに比べて心菜は、真っ直ぐに自分の夢に向かって一生懸命頑張っていた。

俺はそんな心菜が眩しくて、俺なんかが触れてはいけない領域なんだと…思っていたんだ。
だけど、会うたびに、惹かれる事を止められなかった。」