誰にも言えない秘密の恋をしました       (この唄を君に捧ぐ)

2日目、朝から病院内の公園のベンチに座り、足速に通り過ぎる出勤前の人々を観察する。

心菜を知る人がいないか、日本人はいないかと目を凝らし、行き交う人々をひたすら見つめる。

さすがアメリカ、多国籍文化だ。

アジア系も結構働いているようで、黒髪を見つけては耳を傾けるが、聞こえて来るのは中国語や英語ばかり、日本人は思っていた以上に少ないのかもしれない。

就業時間を過ぎ、行き交う人もまばらになる。
今度は近くにある、日本人が立ち寄りそうなコミュニティや教会に行き、心菜らしき人物がいないか探す。

何一つ有力な情報は無く、否応にも不安が押し寄せる。

何か事故に巻き込まれたのでは無いか?

もしかしたら体調が悪くて入院している?
ネガティブな方にばかりに思考が押しやられる。

昼にまた、病院内の公園のベンチに舞い戻る。

歩き回っても埒があかない。

ここに来て早くも煮詰まりだ。
近くのカフェで買って来た、サンドイッチとコーヒーを食べながら思案する。

もしかしたら、日本大使館なら邦人の事はある程度把握してる筈だ。彼女が既にLAにいない事だってあるかもしれない。

…それかリトル・トーキョーで聞き回るか?
希望が1%でもあるのなら、なんだってやる覚悟でいる。

そんな事を考えながらコーヒーを飲んでいると、
「あのー、すいません。」

不意に目の前に人影が出来て反射的に顔を上げる。

見上げれば黒髪の小柄な女性が2人、驚いたような顔でこちらを見ている。

「あの…北條 蓮さんですか?」

恐る恐るというように声をかけられ、2人は蓮を穴が開くほど見つめてくる。

これほど名が知れていて良かったと思った事はなかった。

「ええ、そうです。
ここの従業員の方ですか?」

聞けば彼女達は1年前に研修で日本から来て、先月から正社員として働き出したと言う。

看護師では無いようだが、心菜と同じインターンシップの制度を使って来ているようだ。