誰にも言えない秘密の恋をしました       (この唄を君に捧ぐ)

誰かが足速にやって来る足音がして、

「失礼します、龍二です。
お二人にお耳に入れたい事があります。入ってもよろしいでしょうか?」

「入れ。どうした?」

父が声をかけ、龍二が入って来る。

「失礼します。」
襖を開けて、龍二は直ぐに俺と目を合わせ頷く。

「蓮に言われて、少し中山麻里奈について調べさせて頂きました。」

「どう言う事だ?」
父は怪訝な顔で眉を寄せる。

「彼女、最近ブランドバックを買い漁ったり、ホストクラブでかなり羽目を外してる噂があるらしく、今、本人に問いただしたら白状しました。
手切れ金の500万、着服して使い果たしたらしいです。」

元々金遣いの荒さは目に余るものがあったが、これはアウトだろうと思うと共に、やはり心菜は受け取らなかったんだと胸を撫で下ろす。

それは彼女なりの意思表示だと直ぐに悟る。

決して金が欲しくて一緒にいた訳じゃ無いと言う事だ。

だけどいったい何処へ行ったんだ。
今、何処で何をしている?
俺の不安は限りなく波の様に押し寄せてくる。

この1週間、少ないプライベートの時間全てをかけ、彼女が行きそうな場所を当て無く探し回った。

彼女が住んでいたアパート。
よく行くコンビニ、スーパーに、最寄りの駅。電車にプラットフォーム…。

何処にも心菜の形跡は無く、本当に彼女の事を何も知らないんだと実感した。

何か手掛かりは無いかと、躊躇していた彼女の自室にあるドレッサーや、タンスの引き出しを決心して開けて中を見た。

何も入っていなかった…。

ドレッサーの引出しからは『不要な物は捨てて下さい。』と、書かれた小さな付箋紙が1枚。

あーあ…と打ちひしがれて頭を抱えて独りうずくまる。

悲しくて、苦しくて、辛くて、負の感情が湧き出すのに、涙を流す事も出来ず、不甲斐ない自分自身を罵倒するばかり…。

5日後、彼女の兄から連絡が来た。

心菜の荷物が5箱実家に送られて来たと言う。
その中にも手紙が一枚、兄と祖父宛に入っていた。

『心配かけてごめんなさい。荷物をしばらく預かって下さい。また、落ち着いたら連絡します。』とだけ書かれていたらしい…。