心菜は思う。
前に言われた時は戸惑い、躊躇した。
私なんかといたら足手纏いだし、蓮さんにとても釣り合わないと思ったから。
だけど今は…
少しでも彼の力になれるのなら、助けて癒してあげられるのなら側にいたいと思う。
何よりもその心を守りたい。1人にさせてはいけないと思う。
「こんな私でも、蓮さんの役に立てる?」
「もちろんだ。心菜の存在自体が俺の生きる意味だ。側にいてくれるだけで強くなれる。」
しばらく2人見つめ合う。
「よろしく、お願いします。」
心菜が決意したように言う。
はぁーっと蓮は息を吐きホッとした顔をする。
「良かった。緊張した…また断られたら立ち直れないと思った。」
心菜は信じられないと思う。
裸で抱き合っている分、蓮の鼓動が分かりやすく伝わってくる。
あの、何万人という歓声を浴びステージで堂々と歌う人が?
誰よりも気高く、人を魅了するカリスマ性と揺るがない意志を持った人が?
私1人の為にこんなにも…。
「あーあ、安心したら腹減ったな。」
そう言って、ザバァと心菜を抱き上げ立ち上がる。
「ひゃあー、ちょ、ちょっと蓮さん恥ずかしい。」
心菜は慌てふためき身体を隠す。
脱衣室に置かれた籐で作られた椅子にフワリと降ろされて、バスタオルでポンポンと優しく拭かれる。
「じ、自分やります…。」
心菜は恥ずかしくて真っ赤になって、慌ててバスタオルを奪い取って身体に巻き付ける。
突然、顎をクイっとされて唇を奪われる。
えっ!?っとびっくりして心菜が固まる。
「この後に及んで敬語とは…俺の心を惑わせる策士か?」
蓮は自分の身体を拭きながらニヤリと笑う。
「だって蓮さんが…。」
抗議したいのに頭が上手く回らない。
バサァと適当に浴衣を羽織り蓮が言う。
「夕飯が来るまで時間が無い。心菜はちゃんと髪乾かして支度してからおいで。」
蓮はそう言って、無造作にガシガシと髪を拭きながら脱衣室を出て行ってしまう。
蓮さんが風邪ひいちゃう。
心菜は内心焦りながら、紺地に花柄の浴衣を選び着替え、髪を乾かしパタパタと蓮の後を追う。



