誰にも言えない秘密の恋をしました       (この唄を君に捧ぐ)

海岸線をしばらく走ると、見晴らしの良い高台を登る。
どうやら今夜予約した宿はそこにあるらしい。

「温泉があって、部屋に露天風呂も付いてるらしい。」

「そんな凄い所…。」
今日の朝で良く予約が出来たなぁと感心する。

「これはさすがに名前使わせて貰った。」
蓮がフッと笑う。

「えっ?それは…私一緒じゃダメじゃない!?」
むしろ今度は私が顔を隠すべきでは?と心菜は心配になってくる。

「大丈夫だ。旅館の名誉にかけても芸能人のお忍びは暴露されない。上手く誰にも合わないようにしてくれるから。」

蓮は大きな旅館の門をくぐり、ロータリーで車を停める。
すると、着物を着た旅館の女将らしき人が車に近付いて来てにこやかにお辞儀をする。

「お待ち申し上げておりました。
ようこそおいで下さいました。
どうぞ、お車はそのままでお荷物はこちらでお運びしますので、お部屋の方にご案内致します。」

丁寧に頭を下げられる。

蓮が外に出ると、仲居さんらしきが心菜の助手席側のドアを開けてくれる。

戸惑っていると、蓮がすかさず手を出してくれるから反射的に握ってしまい外に出る。

「ありがとうございます。
荷物はトランクにあります。これ、車のキーです。後はよろしくお願いします。」

蓮は慣れているようで、心菜にコートを羽織らせて、手を繋いでエスコートしてくれる。

「こちらでございます。
道中お疲れ様でございました。暖かいお食事をご用意させて頂いておりますので、お時間の方は何時ぐらいになさいますか?」

女将は2人を部屋に誘導しながら話しを繋げていく。

「どうする?先に風呂入るか?」
スマホの時計を心菜に見せながら蓮が聞いて来るから。

「えっと、お風呂先に入りたいです。…19時くらいとかどうですか?」

慣れない心菜は遠慮気味にそう言う。

「じゃあ、19時でお願いします。」

通された部屋は広い和風庭園の片隅にある離れだった。

周りは木々に囲まれていてプライベートが守られた造りになっている。

「わぁ、素敵ですね。」
部屋に入るなり感極まって心菜が呟く。

「ありがとうございます。当宿自慢の離れでございます。内風呂から貸切の露天風呂に入れますので、ごゆっくりお寛ぎ下さいませ。」

女将と後から付いて来た荷物持ちの人が、お辞儀をして部屋を去って行く。

「蓮さん、庭に池がある。」
心菜ははしゃいで窓際に駆け寄る。

小庭には小さな池があり、金魚が何匹か泳いでいる。側には小さな灯篭があり、そっと池を照らしている。

「素敵なところ。」
二階建てになっている離れは、1階がお食事場所の畳の続き間があり、2階には寝室が2部屋あった。

和室にはふわふわの布団が2組敷かれていて、洋室にはキングサイズくらいの大きなベッドが置かれていた。

「どっちで寝る?」
部屋を2人で探索していると蓮が聞いて来る。

「蓮さんは?」

「俺は、そうだな…普段と雰囲気が違うから布団も良いな。」
蓮がそう言うから心菜は、

「じゃあ、私はベッドにしよっ。」
と、とぼけてみる。

フッと蓮が笑って、
「そう来たか。絶対離れないからな。」
と蓮も負けず言って笑う。

心菜にちょっとずつ遠慮が無くなった気がして、そんな何気無いやりとりが蓮が嬉しかったりするのだ。