気付けば駅のロータリーに到着していた。

「一心も良い奴だな。」
不意に北條蓮がそう言って、俺に1枚の名刺を渡してくる。

「えっ…これって…。」

「俺の名刺、一応あるんだ。
プライベートナンバー書いたから落とすなよ。」

「…マジか…。」
今夜2度目のマジかを呟き車を降りる。

「ありがとうございました。心菜、すいませんがよろしくお願いします。」
そう伝え、車のドアを閉める。

駅に向かい歩き出す瞬間…

「一心、ありがとう。」

はっ!?と驚き、パッと振り返る。

運転席の窓が閉まりがかるタイミングで、北條蓮は軽く手を振って去って行く。

マジでカッコいいな…。

これは…惚れるだろ。男の俺だってドキッとするわ。

おい、アイツこんな公共の面前で顔出して大丈夫なのか?
そう思い俺はもらった名刺を、胸ポケットの名刺入れに急いで入れて、コソコソしながら駅まで急ぎ歩く。

心菜、頑張れ。薄々手離して良い男では無いぞ。幸せになれ。