誰にも言えない秘密の恋をしました       (この唄を君に捧ぐ)

ラーメンが届き、待ってましたと一心が飛び付く。

だけど、テーブルが低すぎてソファーに座ったままだと若干食べ辛い。

心菜が床に正座して食べようとするから、

「心菜、床は冷たいだろ。」
蓮が心配して、すかさずクッションを持って来て心菜を座らせる。

「ありがとうございます。」

蓮が心菜に膝掛けを掛けて、割箸まで割って渡すから、側から見ていた一心が驚き目を見張る。

「蓮さん…若干過保護過ぎないか?
本当に心菜の事好きなんだな…。」
そう一心が呟く。

「始めからそう言ってるが。」
当たり前だと言うような顔を一心に向ける。

「心菜、熱いから気を付けて。」
過保護が半端なく漏れ出る蓮にタジタジになりながら、心菜はこくんこくんと頷く。

「北條蓮も意外と普通なんだな。
もっと高飛車で俺様な感じかと思ってた。」
一心がそう本音をサラッと言うから、

「確かに、周りからはそう思われてるが、それで一向に構わない。本当の俺は、心菜さえ分かってくれてればそれでいい。」

「勿体無い気がするけど…
まぁ、今以上にモテたら心菜が大変だしな。」
一心はそう言ってラーメンを食べ進める。

「お兄ちゃん、その食べ方お行儀悪いよ。」心菜が一心を咎める。

一心を見ると床に座り片足は立膝にしてラーメンを啜っている。

「長い足が邪魔だから仕方ないんだよ。」
一心がそう言って心菜を見やる。
ちなみに一心は175㎝ぐらいだ。

蓮は入院時に計測したら185㎝だった。

その、蓮はというと長い足を組んでトレーごと載せて器用に食べている。
心菜と目が合い、何?と言う顔をしてくるから、

「…蓮さんと私って、30㎝くらい身長差があるんですね。」
と、今更ながら気付いた事を伝える。

「小さいなとは思ってたが、本当に小さいな。」
蓮が目を細めて微笑む。

「心菜、明日からヒール履け。ちんちくりんじゃ、釣り合いが取れないぞ。」
一心がまた、変に首を突っ込んで言ってくる。

「ヒール?履いた事ないんだけど…。」
身長すらも釣り合わないんだ…心菜はちょっとだけ落胆する。

「心菜、俺は別に気にして無い。心菜は心菜なんだからいいんだ。」
蓮はそう言って心菜を安心させる。

心菜も気を取り直して、ラーメンをふうふうして食べ始める。
温かなラーメンは空腹に染みてとても美味しい。

「う〜ん、美味しい。塩ラーメン久しぶり食べました。蓮さんは?とんこつはどうですか?」
心菜は食べ物の事になると途端に口数が増える。

「見た目よりあっさりしてて食べやすい。食べてみるか?」

蓮は、いつも心菜とは分け合う事が当たり前になっていたから、兄の目も気にせずれんげにラーメンを乗せて心菜の口の前に差し出す。

心菜は少しだけ躊躇するが、甘い誘惑には勝てず、パクッとレンゲに口を運ぶ。

「うん。あっさりなのに味はしっかりしてて美味しいです。スープ後でちょっとだけ飲ませて下さいね。」

心菜の可愛いお願いに蓮もにこやかに笑う。

「ああ、どうぞ。塩とどっちが好きか?」

「う〜ん。どっちも迷っちゃいます。」

そんな2人の会話をバカップルか⁉︎と、一心は半ば呆れながら見つめ、そして少しだけ妹を取られたような気持ちで寂しなる。

「兄ちゃんの醤油も食べてみるか?」

「醤油はそこまで惹かれなかったから大丈夫。」
心菜の素っ気ない態度に、

「何だよ。昔っからお兄ちゃんお兄ちゃんって、俺の背中にくっついて来たのにつれないなぁ。お兄ちゃんは寂しいよ。」

そう言って泣く真似をする。

「お兄ちゃんがちゃんとしてないから、心配で着いて行ってたんだよ。いつも、忘れ物とか落とし物とかして来るから。」

まさかの返答で一心は固まる。

ハハッと蓮が可笑しそうに笑いながら、
「守ってたつもりが、守られてたんだな。」

そう言われて一心は不貞腐れながらラーメンを食べ終えた。

ただ、一心の中で北條蓮のイメージが180度変わった。
TVの中の北條蓮はあまり感情を表に出さず笑わない。カリスマに満ち溢れた支配者的なイメージだった。

今、目の前で一緒にラーメンを食べている男は、意外と良く笑う穏やかな人間だ。

そして心菜に過剰なまでに過保護だ。

この男なら心菜を任せても大丈夫だな、と人知れず思う。