誰にも言えない秘密の恋をしました       (この唄を君に捧ぐ)

「心配しなくても、この先も心菜を手離す気は無い。大事にするよ。」
蓮がサラッと言ってのけるから、

「おい、良かったなぁー心菜。」
兄は先程とは打って変わってニコニコ笑顔で、心菜の頭をわしゃわしゃ撫ぜる。

「ちょ、ちょっと…髪クシャクシャになる。」
心菜が抗議するのも聞かないで、

「良かった良かった。この先も安泰だな。」と、上機嫌だ。

「怒り出すのかと思ってハラハラしたよ…。」
もう、と心菜は兄を見て苦笑いする。

それを蓮は運転席のバックミラーから見て、仲良し兄妹だなと、微笑ましく思うと同時に羨ましいとも思っていた。

今まで、心菜がここまで打ち解けて話す姿を見た事がない。まだまだ俺には心を開いていない証拠だ。

敬語だって未だに取れない…

人知れずため息を吐く。


車を10分程走らせると蓮が予約したお店に到着した。

有楽街の一角にある、お洒落なお店がフロア事に入ったビルの地下駐車場に車を停める。

こういう世界に足を踏み入れた事の無い心菜にとっては始めての経験で、何と無く緊張してしまう。

「また、高そうな店だなぁ。」
兄の一心は呑気にそんな事を言っている。

心菜は不安げな表情で蓮の後ろに隠れて周りを見渡す。

蓮としては肩を抱いて安心させてあげたいが兄がいる手前はばかられ、頭をポンと撫ぜるに留まる。

「ここは学生時代にアルバイトしてたんだ。
その縁でこの店のオーナーが気安く場所を提供してくれる。」

「アルバイトしてたんですか?知らなかった…」
お金に苦労して無さそうな蓮が、アルバイトをしてた事を聞いて心菜は驚く。

まだまだ私、蓮さんの事を多くは知らない…。

兄のように何でも聞けばきっと隠さず話してくれるんだろうけど、どこまで踏み込んで良いのか…まだやっぱり遠慮がある。

エレベーターの入り口に行くとホスト風の男性が立っていた。
「蓮さん、お疲れ様です。オーナーから聞いてます。こちらにどうぞ。」

エレベーターの中は薄暗い照明で顔も良く見えない。ジャズ調の音楽も流れてくる。
心細くなった心菜は思わず蓮の袖口を掴む。

蓮が、どうした?と言う顔で心菜を見てくるから、
「あっ、ごめんなさい…。」
と、小声で言ってパッと話す。

蓮としてはそれだけで嬉しいから、手を差し出して心菜から繋ぐように目で促す。

おずおずと手に触れてくる心菜の手のひらをぎゅっと握って安心させる。