誰にも言えない秘密の恋をしました       (この唄を君に捧ぐ)


応接室を出て三人で地下駐車まで行く。
いつもの蓮の車では無く、こっちだと連れて行ったのは黒の4WDだった。

「いつもの車だと目立つから出待ちにバレると思って。」
後部座席のドアを開けながら、心菜にそう伝える。

心菜は、いったい何台所有してるんだろ?と思い少し心が騒つく。

車高が少し高く、心菜が乗るのを蓮が助けてくれる。

「お兄さんもどうぞ。」
蓮に促され、兄も心菜と一緒に後部座席に乗り込む。

運転席に乗りこんだ蓮に、ここまで黙り込んでいた兄が口を開く。

「あの、お兄さんはちょっと辞めてもらえますか。俺、あなたより年下ですし、あなたの兄になったつもりはまだないので。敬語も辞めて下さい。」

兄はぶっきらぼうにそう言う。

それを咎めるように心菜が、
「お兄ちゃん!」
と、小声で袖を引っ張る。

「分かった。確かに、一心でいい?」
蓮がいつものテンションで言い、車が静かに動き出す。

「このまま出ても大丈夫ですか?隠れた方が…。」
心菜は出待ちのファンが怖くてビクビクする。

「カモフラージュでマネージャーが先に出てる筈だから、多分誰もいない。」
それを聞いて少しホッとする。

出入り口に差し掛かり、ハラハラしながら外を見ると、確かに出待ちの数は少なく駅に向かう人の波も先程よりは減っていた。

大通りを抜け脇道に入って、心菜はフーッと緊張を解く。

「ラーメン屋、俺の知ってるところでいいか?」

蓮さんがそんな心菜を笑い、バックミラー越しで見ながら聞いてくる。

「はい。お任せします。」
その声を聞いて、蓮はインカム越しに電話をかける。

「もしもし、俺だけど。個室空いてる?今からいい?」
知り合いの店なのか気安そうに話しかけている。

電話を切って、
「直ぐ近くだから、飲み屋の一角だけど個室があるから良く使うんだ。ラーメンとか何でもUberで食べられる。」

なるほど、そこは場所だけ提供してくれて持ち込みがオッケーのお店なんだ。そんな場所あるんだ…心菜は1人感心する。