誰にも言えない秘密の恋をしました       (この唄を君に捧ぐ)

アンコールが終わり、蓮とバンドメンバーがステージに並び一礼をして袖に帰って行く。

大観衆の歓声が会場内に響き渡り、しばらく感動の渦で、誰もがなかなか椅子から立ち上がれなかった。

照明が明るくなり徐々に人々が席を立ち動き出す。

「心菜、お前泣き過ぎ。」
兄が笑いながら頭をポンポンしてくる。
ハッと我に帰った心菜は、人混みが減るまでその場に止まり、会場内を傍観する。

「すげぇなー北條蓮は…。 
何万人を魅了して媚びる事無く去ってったな…。
しっかし、この会場何万人入るんだ?」

兄はそう言って周りを物珍しそうに見渡す。

「お兄ちゃん、そろそろ行こうか?」
気持ちを整えて、涙を拭き心菜が立ち上がる。

「すいません。」

不意に呼びかけられて振り向くと、先程の事務所社長の秘書が近くまでやって来ていた。

「あっ…先程はありがとうございました。」
慌てて心菜が挨拶をすると、

「先程の部屋で少しお待ち頂いてよろしいですか?」
コンサートが終わったのに何でだろうと、兄と心菜で顔を見合わす。

秘書の方の誘導でまた待合室の様な場所に通される。

「彼が自分の知人を招待するのは初めてでしたので、こちらも驚いていたんです。
もう少しで出て来れるかと思いますので少々お待ちください。」
兄にそう話しかけ秘書は去って行った。

兄はさっぱり分からないと言う顔を心菜によこす。

心菜は少しだけ…まさか!?と、イヤな予感を感じながらも、イヤイヤ今夜は蓮さんあんなに歌って疲れてるだろうし…

きっとマネージャーの方が挨拶にでも来るんじゃないかな?と思い直す。

「腹減ったな。ラーメンどこ食べに行くかなぁ。この近くにラーメン屋あったかなぁ?」

兄は呑気にスマホを取り出し、ラーメン屋を検索し始めた。

心菜は窓際に行き、駅へと向かう群衆の波を見つめて、
「駅混みそうだね。帰りはタクシーで実家に一緒に帰ろうかな?明日休みだから。」

実家だったら洋服も少し置いてあるし、この場所から心菜のアパートよりも近い。

「そうしな。たまには帰って来ないかなぁってじいちゃん寂しがってたからさ。喜ぶよ絶対。」

そんな話しをしていると、

トントントン
と、ノックの音が聞こえてガチャッと誰かが入って来る。