誰にも言えない秘密の恋をしました       (この唄を君に捧ぐ)

ふぅーっと軽く息を吐き、蓮さんが優しく頭を撫ぜてくれる。

「あの男、俺の心菜に気安く触れやがった。」

俺の…心菜…?
その言葉だけでドキドキと心拍数が上がってしまう。

「えっと…
山田先生は1番最初に蓮さんを見てくれた救急医です。悪い人ではありませんよ?」

「俺から心菜を奪おうとする奴はみんな敵だ。」

奪う…?私を…?

「そんな事は絶対あり得ませんよ。
…だって…私が好きなのは蓮さんですから。」

もう一度見上げて蓮さんを見る。
あっ、目が合った。
それだけで嬉しくて笑顔になる。

蓮さんも落ち着きを取り戻したのか、

「…ごめん。せっかく会えたのに…
大人気なく嫉妬して…心菜には怒って無い…。」

と、蓮さんが謝ってくるから、急いで首を横に振る。

「大丈夫です。
今日の蓮さん、凄く分かりやすくて嬉しいです。」

目を合わせ笑ってくれる。
良かった…仲直り出来て…

いやいや、良く無い!
ここ公共の面前…だってば!

しかも職場前…どうしよう…この時間、帰宅する人多いし…

急に今の状況が恥ずかしくなり俯く。

「どうした?」

頬に触れられて、顔を仰がされる。

「どうしましょう…ここ、職場前でした…
誰かに見られたら2度と仕事行けません。」

急に不安に駆られる。

「それは…困ったな。
多分、顔は見られて無いと思うが、ここからどう去るかが問題だ。」

悪戯っ子の顔をして蓮さんが言ってくる。

「どうしましょう…。」

フッと笑って、蓮さんは楽しそうだ。

「よし、1、2、3で左手に歩くから、俺の影に隠れて行くぞ。」

1、2、3…心で唱えて、蓮さんの腕に張り付き顔を隠しながら歩き出す。

ドキドキが止まらない。
どうか、知り合いが誰もいませんように。

ちょっと歩くと、蓮さんがこっちと言って喫茶店の駐車場に入って行く。

「この場所なら、心菜が通るのが分かると思って待ってたんだ。」

喫茶店前には数席テラス席がある。そこから一部始終を見られていたらしい。

蓮さんの車に乗り込み、ホッと一息吐く。

「大丈夫だったでしょうか?」
恐る恐る車の窓から外を覗く。

ハハッと蓮さんが笑う。

「悪い事してる訳でも無いのに、そこまでコソコソしなくても大丈夫だろ。」

「蓮さんは特別な人なんですから。世間様にバレたら大変な事になっちゃいますよ。」

蓮さんに目を向けて訴える。

「俺は、心菜だけの特別でありたい。
別に、世の中なんてどうでも良い。
だけど心菜が俺のせいで生き難くなるのは辛いから、この日常は守りたい。」

真剣な顔を向けられる。
だから、自分の事は大丈夫だと言いたいんだろうか?

深く考えるのは辞めよう…怖くなって動けなくなっちゃうだけだよ。自分にそう言い聞かせる。