午後も無心で仕事をこなし、気付けば夕方定時を回っていた。
「ここちゃん、上がって良いわよ。
夜勤の人と引き継ぎして。今日は、やたらと良い動きしてたわね。」
看護師長に褒められる。
「ありがとうございます。では、引き継ぎしたら帰ります。」
にこりと笑って挨拶を交わす。
1日があっという間だったな。
ロッカーに戻り私服に着替えて、帰り道を歩く。
病院から自宅までは歩いて15分。普段は自転車で通っているけど、今朝は曇り空だったから歩いて来た。
あっ、やっぱり降り出したんだ。
折りたたみ傘をさして家路に急ぐ。
カバンでスマホが震えてる?
そう思って足を止め、急いでスマホを見る。
えっ…蓮さんだ…。
「も、もしもし。」
忙しなくバグバグする心臓を押さえながら慌てて出る。
『お疲れ様。今、帰り?』
淡々と話す声はいつも通りの蓮さんで、なぜかとても安心する。
『心菜?もしもし?』
驚き過ぎて話し出せない私を気遣って、蓮さんが呼びかけてくる。
「お、お疲れ様です…ちょっとびっくりしちゃって。」
一息入れて歩き出す。
『今、外?歩いてるのか?』
「はい。雨が振り出したので今日は歩いて帰ります。」
『雨か…知らなかったな。タクシー乗れよ。』
また、蓮さんの過保護が顔を出す。
「歩いて15分くらいですから大丈夫ですよ。
道も街頭があって人通りもありますから。」
少しでも安心して欲しくて、何んでも無いように明るく言う。
『心菜は何にも分かって無い…。』
ため息と共にそう言われる。
あれ?そういえば、今夜、コンサートじゃないの?
ふと思い出して慌てる。
「蓮さん、今夜コンサートじゃないんですか?」
『ああ、リハ終わって後30分あるから、今は休憩中。』
「私と電話なんてしてる場合ではないんじゃないですか⁉︎ちゃんと休憩取って下さい。」
慌ててそう言う。
『心菜が今夜、安眠できないと思って電話した。』
今度は笑いながらそう言ってくる。
「えっ?」
『水曜日、心菜が嫌がる事は何もしない。
気を病まないで遊びにおいで。夕飯、楽しみにしてる。そう言いたかっただけだ。』
フッと笑う蓮さんの声。
何もかもお見通しだ…。
「…分かりました…。何が食べたいですか?」
『そうだなぁ。得意料理は?
心菜の1番お勧めが食べたい。』
1番自信のある料理…何だろ?
母は早くに亡くなったから料理を教えてくれたのはおじいちゃんだし、後は自己流だからそんなに自信は無いけど…。
「ありきたりで、申し訳無いですけど…カレーとかオムライスとか、兄はホワイトシチューがお気に入りでした。」
『へぇ。じゃあ、まずはホワイトシチューだな。』
楽しそうにそう言ってくる。
「分かりました。お買い物もその時で良いですか?」
『ああ、一緒に行こう。』
「今日は?お夕飯食べましたか?
後、少ししか時間無いですよね。コンサート頑張って下さい。応援してます。」
一気にそれだけ言って電話を切ろうとする。
『弁当をさっき食べた。
心菜もコンサート観たい?』
不意に蓮さんがそう聞いて来るから、
「それは…いちファンとしては観てみたいですけど…今からチケットは無理ですよ。
最終公演しかないじゃないですか。」
一応、チケットがあるか無いかは確認したから完売なのは知っている。
北條蓮のコンサートツアーのファイナルなんだから。
『俺を誰だと思ってる?
チケットくらい何とでもなる。1人で来れる?
いや、危ないな。
誰かと…2枚用意するから、友達誘って2人でおいで。』
「本当に?本当にですか!?
嬉しい。ありがとうございます!」
喜びで我を忘れてそう伝える。
ハハっと蓮さんの笑い声が聞こえる。
『何か今までで1番の喜び様だな。
分かった、水曜日までに用意しとくから。
じゃあ、気を付けて帰れよ。
…今、どこら辺まで来た?』
「えっと…家の近くのコンビニです。もうすぐそこですよ。」
もしかして、1人の帰り道を心配して話しを繋げてくれていたんだろうか?
『分かった。じゃあ、電話切ったら走れよ。
だけど、雨だから足元は気を付けろ。
後、家に着いたら必ずメール入れて。
はい、位置について。』
「えっ!は、走るんですか、今から⁉︎」
『いいから、時間が無い。
よーいドンで電話切って走り出せよ。
行くよ。位置について、よーいドン!』
えっえっ?と思っているうちにスタートが切られて、慌てて電話を切って走り出す。
こんなに走ったのは久しぶりってぐらい、水溜りも気にせず急いで走って自宅に到着する。
メール、メール入れなきゃ。
息は切れ切れで、はぁはぁしながらメールを入れる。
「家に到着しました。コンサート頑張って。」
そう打って、はぁーと呼吸を整える。
7時5分前…コンサートは7時開演の筈。
間に合ったかな?
少し心配になりながら部屋に入ってカーテンを閉める。
蓮さんのコンサート行けるんだ。嬉しい。
誰を連れて行こうかなぁ。
高山先輩…病院のつながりは良く無いよね。
短大の時の友達にした方が良いかな?
あっ、蓮さんファンの由佳ちゃん誘えばきっと喜んでくれる。
ううん…どうやってチケット手に入れたのかって、きっと追求されると困る。
どうしようかなぁ…。
お兄ちゃん…身内が1番無難かな。
お兄ちゃんなら深く聞いて来ないだろうし。
そんな事を考えているとメールが入っているのに気付く。
『お帰り、3分かかったな。
アパートまでのあの道は暗くて街頭も少ないから、雨じゃなかったら1分で走れるようにしろ。風邪ひかないように暖かくして休めよ。じゃあな、おやすみ。』
陸上選手じゃ無いんだから1分は無理だよ…蓮さん。
あなたはコンサート間に合ったの?
心でそう思うが…メールは入れないでおこう。
「ここちゃん、上がって良いわよ。
夜勤の人と引き継ぎして。今日は、やたらと良い動きしてたわね。」
看護師長に褒められる。
「ありがとうございます。では、引き継ぎしたら帰ります。」
にこりと笑って挨拶を交わす。
1日があっという間だったな。
ロッカーに戻り私服に着替えて、帰り道を歩く。
病院から自宅までは歩いて15分。普段は自転車で通っているけど、今朝は曇り空だったから歩いて来た。
あっ、やっぱり降り出したんだ。
折りたたみ傘をさして家路に急ぐ。
カバンでスマホが震えてる?
そう思って足を止め、急いでスマホを見る。
えっ…蓮さんだ…。
「も、もしもし。」
忙しなくバグバグする心臓を押さえながら慌てて出る。
『お疲れ様。今、帰り?』
淡々と話す声はいつも通りの蓮さんで、なぜかとても安心する。
『心菜?もしもし?』
驚き過ぎて話し出せない私を気遣って、蓮さんが呼びかけてくる。
「お、お疲れ様です…ちょっとびっくりしちゃって。」
一息入れて歩き出す。
『今、外?歩いてるのか?』
「はい。雨が振り出したので今日は歩いて帰ります。」
『雨か…知らなかったな。タクシー乗れよ。』
また、蓮さんの過保護が顔を出す。
「歩いて15分くらいですから大丈夫ですよ。
道も街頭があって人通りもありますから。」
少しでも安心して欲しくて、何んでも無いように明るく言う。
『心菜は何にも分かって無い…。』
ため息と共にそう言われる。
あれ?そういえば、今夜、コンサートじゃないの?
ふと思い出して慌てる。
「蓮さん、今夜コンサートじゃないんですか?」
『ああ、リハ終わって後30分あるから、今は休憩中。』
「私と電話なんてしてる場合ではないんじゃないですか⁉︎ちゃんと休憩取って下さい。」
慌ててそう言う。
『心菜が今夜、安眠できないと思って電話した。』
今度は笑いながらそう言ってくる。
「えっ?」
『水曜日、心菜が嫌がる事は何もしない。
気を病まないで遊びにおいで。夕飯、楽しみにしてる。そう言いたかっただけだ。』
フッと笑う蓮さんの声。
何もかもお見通しだ…。
「…分かりました…。何が食べたいですか?」
『そうだなぁ。得意料理は?
心菜の1番お勧めが食べたい。』
1番自信のある料理…何だろ?
母は早くに亡くなったから料理を教えてくれたのはおじいちゃんだし、後は自己流だからそんなに自信は無いけど…。
「ありきたりで、申し訳無いですけど…カレーとかオムライスとか、兄はホワイトシチューがお気に入りでした。」
『へぇ。じゃあ、まずはホワイトシチューだな。』
楽しそうにそう言ってくる。
「分かりました。お買い物もその時で良いですか?」
『ああ、一緒に行こう。』
「今日は?お夕飯食べましたか?
後、少ししか時間無いですよね。コンサート頑張って下さい。応援してます。」
一気にそれだけ言って電話を切ろうとする。
『弁当をさっき食べた。
心菜もコンサート観たい?』
不意に蓮さんがそう聞いて来るから、
「それは…いちファンとしては観てみたいですけど…今からチケットは無理ですよ。
最終公演しかないじゃないですか。」
一応、チケットがあるか無いかは確認したから完売なのは知っている。
北條蓮のコンサートツアーのファイナルなんだから。
『俺を誰だと思ってる?
チケットくらい何とでもなる。1人で来れる?
いや、危ないな。
誰かと…2枚用意するから、友達誘って2人でおいで。』
「本当に?本当にですか!?
嬉しい。ありがとうございます!」
喜びで我を忘れてそう伝える。
ハハっと蓮さんの笑い声が聞こえる。
『何か今までで1番の喜び様だな。
分かった、水曜日までに用意しとくから。
じゃあ、気を付けて帰れよ。
…今、どこら辺まで来た?』
「えっと…家の近くのコンビニです。もうすぐそこですよ。」
もしかして、1人の帰り道を心配して話しを繋げてくれていたんだろうか?
『分かった。じゃあ、電話切ったら走れよ。
だけど、雨だから足元は気を付けろ。
後、家に着いたら必ずメール入れて。
はい、位置について。』
「えっ!は、走るんですか、今から⁉︎」
『いいから、時間が無い。
よーいドンで電話切って走り出せよ。
行くよ。位置について、よーいドン!』
えっえっ?と思っているうちにスタートが切られて、慌てて電話を切って走り出す。
こんなに走ったのは久しぶりってぐらい、水溜りも気にせず急いで走って自宅に到着する。
メール、メール入れなきゃ。
息は切れ切れで、はぁはぁしながらメールを入れる。
「家に到着しました。コンサート頑張って。」
そう打って、はぁーと呼吸を整える。
7時5分前…コンサートは7時開演の筈。
間に合ったかな?
少し心配になりながら部屋に入ってカーテンを閉める。
蓮さんのコンサート行けるんだ。嬉しい。
誰を連れて行こうかなぁ。
高山先輩…病院のつながりは良く無いよね。
短大の時の友達にした方が良いかな?
あっ、蓮さんファンの由佳ちゃん誘えばきっと喜んでくれる。
ううん…どうやってチケット手に入れたのかって、きっと追求されると困る。
どうしようかなぁ…。
お兄ちゃん…身内が1番無難かな。
お兄ちゃんなら深く聞いて来ないだろうし。
そんな事を考えているとメールが入っているのに気付く。
『お帰り、3分かかったな。
アパートまでのあの道は暗くて街頭も少ないから、雨じゃなかったら1分で走れるようにしろ。風邪ひかないように暖かくして休めよ。じゃあな、おやすみ。』
陸上選手じゃ無いんだから1分は無理だよ…蓮さん。
あなたはコンサート間に合ったの?
心でそう思うが…メールは入れないでおこう。



