「…そんなに顔に出てますか?」
心菜は、息を整えそっと問いかけてみる。

蓮はココアを心菜の手に戻しながら、

「手に取るように分かる。」
と言う。

「蓮さんは…全然分かりません。
ずっと一緒にいたら分かるようになるんでしょうか…。」

「ずっと一緒にいてくれるんだ。」

蓮はポンポンと心菜の頭を撫でて嬉しそうな顔をする。

そんな顔を向けられて、普段あまり笑わない蓮さんが、私と一緒にいる事でずっと笑顔でいられるのなら、それだけで良いのかも、と思い始める。

「寒くなって来たな。車に戻るか?」
蓮が立ち上がり、心菜に手を差し伸べる。

少し躊躇した心菜はその手を見つめる。
その手は強引に心菜の手を引き寄せ立たせて、導いてくれる。

「ほら、また考えてる。」
眉間に人差し指を置かれて、心菜は目を丸くする。

「もう、全て俺に任せろ。」
強くそう言われ、何だか凄くホッとする。
歩き出す蓮に引っ張られながら大人しくついて行く。

心菜は、この人に着いて行けば大丈夫だと、広くて大きな背中を見ながら、何故だか不思議とそう思う。

「蓮さん、大好きです。」
その逞しい背中にそっと呟くように思いを告げる。

ピタッと足を止めた蓮は、ハァーっと大きく息を吐き、額に片手を当てて振り返る。

「何だこの不意打ち。」
そう呟いて、心菜を抱きしめる。

ぎゅっと抱き締められて、始めて蓮の心臓の音を聞く。

蓮さんもドキドキしてくれてるんだ。
私と一緒。
そう思うと何だか凄く嬉しくなる。

心菜も大きな背中に手を回しぎゅっとする。

「どうするんだ。帰りたくなくなるだろ。」
蓮が言うから、
「明日、コンサートですよ…。」
と、心菜は言う。

蓮は心菜の頭に顎を置き、ハァーと深いため息を吐く。

「帰るか…。」