リリアーヌは右手に力お入れて、最後の一撃を少年に向けて振り下ろした。しかしリリアーヌは忘れていた。今日は簡単な服と言っても、スカートをはいていると言うことを……。ヒラヒラとしたスカートの裾が足に絡まりバランスを崩したリリアーヌ。それを見逃さなかった少年が木の枝をリリアーヌに向かって振り下ろす……ことは無かった。咄嗟に少年はリリアーヌの持っていた枝をたたき上げた。パンッと音が鳴り、リリアーヌの持っていた木の枝が空中を舞った。
負けた……。
リリアーヌは尻餅をつきながら呆気に取られていた。
現在6歳のリリアーヌだが、新人の傭兵にも負けないほどの剣の才能を持っていた。自分は天才だと、うぬぼれていた。少年が剣の才が無く、普通だと泣きそうになっていたから、手ほどきでもと思っていたのに……。
ボーッとリリアーヌが少年を見つめていると、少年は申し訳なさそうに手を差し伸べてきた。
「ごめん。大丈夫?」
リリアーヌは差し伸べられたその手を取った。よく見るとその手には沢山の剣ダコが出来ていた。こんなになるまで剣を振るって努力しているんだ。
それでも自分は普通だと……。
私は自惚れ、思い上がっていたのに。
努力などしなくても自分は最強だと……。
たかが6歳の子供なのに……。
リリアーヌは涙が出そうになるのを堪え、頬を膨らませた。
「お兄ちゃん弱くも普通でも無いじゃん!私より強いじゃん!」
「えっ……それは……女の子よりはね……。兄は何でも出来るんだ。努力なんてしなくても何でも出来る。羨ましいよ。父様もそんな兄を誇りに思っている。それなのに俺は……」
「お兄ちゃん、そんな事言わないで!お兄ちゃんは絶対この国で最強になれるよ。私には分かるもん!」
そう言うとお兄ちゃんは、困ったように眉を寄せ嬉しそうに笑った。
それが私とグランツ様との出会い。
この時すでに私はグランツ様に心を奪われていた。
あの日の事をグランツ様は覚えていないだろう。
それでも良い。
私が覚えていればそれで良い。


