鍛練場の隣に立てられたこの建物は渡り廊下を使って繋がっているらしい。
アロン様に促され執務室に入ると、書類の山に埋もれるた机の向こう側にいたグランツが立ち上がった。
「リリアーヌ……騎士の制服が良く似合っている」
そう言って誇らしげにグランツ様が笑ってくれる。私はこそばゆい気持ちになり、モジモジしそうになるのをグッと我慢する。今は仕事中なのだからと、唇に力を入れ騎士の礼を取る。
「ありがとうございます」
今は騎士服のためカーテシでは無く、右手の拳を胸に当て、左の拳を後ろに構える騎士の礼が正解だろう。
それを見たグランツ様が、満足そうにコクリと頷いてくれた。
「ではリリアーヌ、皆に紹介する。鍛練場の方へ」
「はい」
リリアーヌはグランツの背中を見ながら廊下を歩いた。
グランツ様は背が高く、肩幅もある。背筋もピンと伸びていて、体幹もしっかりしているのだろう。一歩一歩が力強い。騎士服を着ていてもその奥に潜む筋肉が盛り上がっていて、勇猛さが窺える。その素敵すぎる後ろ姿にキュンキュンと胸が高鳴る。
これから初めてのお仕事……騎士団での挨拶があるというのに、グランツ様と一緒にいられるからと浮かれてしまう。
こんな事ではダメだ。
リリアーヌは剣の鞘に手を置き、スイッチを入れる。
そっと瞳を閉じ、ゆっくりと目を開けた。すると、美しいペリドットの瞳が、青緑へと変化していく。
その瞬間……リリアーヌから放たれた、ただならぬ気配にグランツ様が反応し、チラリとこちらに視線を向けてきた。そして一瞬目を見開いた様に見えたが、すぐに前を向きそのまま歩いていた。


