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 グランツはあれから必死に仕事をこなしていた。

 王太子殿下の生誕祭襲撃事件から二日が経っても城内の混乱は続き、帰る事は皆無だった。リリアーヌの様子は気になったが、この混乱の中、帰る事は許されず、仕事をこなすことを優先させた。それから更に三日が経ち何とか城内も落ち着きを取り戻していたが、グランツは未だに帰れずにいた。

 一刻も早く屋敷に帰りリリアーヌと話がしたかった。

 あの日、鮮血姫と呼ばれていたのは君なのかと……。

 確かにあの日、黒フードの男達の前に飛び出したのはリリアーヌだった。まさかと思い飛び出しそうになった。しかし剣を手にしたリリアーヌは、一瞬で雰囲気が変わり、別人の様になると剣を振いだした。それを俺は見守ることしか出来なかった。王族を守るためだとはいえ、その場から動けないのは歯がゆかった。そんな俺の前で鮮血姫……いや、リリアーヌが男達を討伐していく。リリアーヌの洗練した動きに見とれるしか無かった。

 そしてあの言葉……。「グランツ様を傷つける者は誰であっても許さない」あれは一体どういう意味なのだろうか……?

 早く帰りたい……。

 そう思うが、帰ってリリアーヌに何と声を掛けたら良いのかが分からない。

 君は鮮血姫なのかと、そのまま聞けば良いのだろうか?

 なぜ鮮血姫の存在を隠していたのか……。

 戦死したと聞かされていた英雄……。

 いつもの君と、鮮血姫である君は……どちらが本当の君なんだ……。