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「サラ、向こうの動きはどう?」

「はい。あの平民から聞き出した情報通り、ガルレシア王国が報復を考え不穏な動きを見せているのは確かですね。辺境伯の国境でも何人か捕まえたと報告がありました」

「お父様は何か言っていた?」

「ガルレシアが動くなら来月の王太子殿下の誕生祭だろうとのことでした。リリアーヌ様の心配もされていましたよ」

「まあ、どうして?」

「まあって……何かしでかさないかと」

「そんな事は……」

 無いとは言いきれない。色々と心当たりがありすぎる……。

「どうされたのです?」

 サラの鋭い視線に、リリアーヌは耐えられなくなり視線を逸らした。

「リリアーヌ様……何を考えているか、当てましょうか?」

「分かっているなら、サラ協力して!」

「仕方ありませんね。辺境伯様には報告させてもらいますよ」

「そこは黙っていてもらえないかしら?」

「無理です」

 サラから即答され、リリアーヌはぷくっと頬を膨らませた。

「淑女の顔をなさって下さい。ところでご主人様にこのことを報告されないのですか?」

 私はこの件についてグランツ様に報告をしていない。最近騎士団の動きが慌ただしくなっていた。そう考えるとすでにグランツ様の耳には、かの件について情報が入っていると考えたからだ。

 はぁ……。

 来月の王太子生誕祭が無事に終わると良いのだけれど……。

 黙ったまま深刻な顔をするリリアーヌを、サラはそっと見守った。