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 それから色々と考えて出した結果がこれ……街の治安を守るための巡回だった。

 リリアーヌは王都の街中を颯爽と歩いていた。本日は前回街にやって来た時のドレス姿では無く、パンツスタイルだった。この国や王都で暮らす女性では珍しい装いになる為、何かと目を引くようでチラチラとこちらを見てくる視線が気になる。辺境で飛び回っていたリリアーヌにとってはこちらの方がしっくりとくる格好ではあるのだが……。溜め息を付きたくなるのを我慢していると、サラがリリアーヌの後ろで溜め息交じりに呟いた。

「結局こうなるんですね……」

 そんなサラの言葉を聞き流し、リリアーヌは腰にある剣に触れながら背筋をピンと伸す。回りを警戒しながら鋭い視線で、凜々しく巡回を続けるリリアーヌの姿に、回りから「ほうっ」と溜め息が漏れた。

「ちょっと、あれ!碧青の騎士様?」

「えっ!あれが噂の?キャー素敵!」

「女性なのよね?」

「そんなの関係ないぐらい素敵!」

 伏し目がちに、スッと視線を向ければ、周りにいた女性から黄色い悲鳴が上がる。そんなリリアーヌの後方には、いつものお仕着せのメイド服では無く、黒のフードを深くかぶったパンツスタイルのサラがいた。サラは普段リリアーヌの専属メイドとして働いているが、サラは普通のメイドとはちょっと違う。王族を陰から守り、潜入、諜報、調査といった仕事を行うブライアン家の一族の家系に産まれた人間だ。ブライアン家は一人主人を決めると、そのただ一人のために尽くすと言われている。リリアーヌは子供の頃にサラと出会い、『一生を掛けてリリアーヌ様を守る』と誓いを立てられていた。何故私なんかのために……と分からないことはあるが、サラが近くにいてくれるだけで安心する。サラはかなり身体能力が高い、そこらにいる騎士や冒険者より強いだろう。今では王族の陰と呼ばれる人達と肩を並べる事も出来るほどだった。実はこのことは王族も周知されていることだった。

 リリアーヌはサラのいる場所を確認しつつ町中を歩いて行く。騎士団の巡回が手薄になる時間帯にリリアーヌが勝手に巡回の手伝いをすることにしたのだ。

 少しでも騎士団の負担が軽減するようにと願って……。