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次の日の朝、リリアーヌは一睡もすることが出来ずにベッドから起き上がった。初夜に夫となる人から愛されなかった惨めさから、涙が溢れる。昨夜あんなに泣いたというのに、また涙が溢れてくる。
どうしてグランツ様は……。
それから部屋に入ってきたサラが私の状況を知り、グランツ様を射殺しそうな形相をしていたが、グランツ様と顔を合わせることは無かった。グランツ様は早朝から騎士団本部へと出勤し、屋敷には帰ってこなかった。次の日には帰ってくるだろうかと、夜遅くまで待って見るも、グランツ様が帰ってくることは無かった。
どうして……。
私はグランツ様に嫌われるようなことをしてしまったかしら……。
グランツ様が私を嫌う……いいえ、違うわね。
私を嫌うほどあの人は私を知らない。
私は知っている。
グランツ様には愛した人がいた。グランツ様の元婚約者で、伯爵家令嬢ローズ・ダスト様。私は遠目にだが一度、仲睦まじい二人を見たことがあった。ローズ様は綺麗に巻いた金髪と少しつり上がった赤い色の瞳が印象的な、綺麗なご令嬢だった。時折見つめ合いながら、グランツ様と寄り添う姿に胸が締め付けられた。二人はもうすぐ結婚して幸せになるだろう。そう思っていた矢先に戦争が始まり、ルーレンス王国が勝利を納め、こちらに有利な和平条約が制定された。それからすぐに、グランツ様の顔の傷を理由にローズ様が婚約破棄をしたというの噂が出回った。
グランツ様が婚約破棄せれた。
そんなまさか……。


