『オーバーキル』これ以上、甘やかさないで



「匠刀、入るぞ?」
「……」

1月4日、午後7時過ぎ。
三が日もあっという間に過ぎ去って、新年を迎えたのにもかかわらず、匠刀は自室で廃人と化している。

「明日、部の奴らと神社行くけど、お前も行くか?」
「……」
「ったく、エアコンくらい付けろよ」

兄の虎太郎がエアコンの電源を入れる。
冷え切った室内で、死んだように横たわる弟を見て、虎太郎は溜息を漏らす。

「そろそろ休診明けすんだろ」
「ッ?!!」
「そんなに心配なら、確かめてくりゃあいいじゃん」
「兄貴、サンキュ!!」
「おいっ、上着くらい着てけっ」

虎太郎の言葉に息を吹き返した匠刀は、物凄い勢いで部屋を飛び出した。

桃子が入院してたとしても、ずっと休診になったままではないことを知っている。
小児病棟なら親の付き添いが必要だが、それ以外の科は緊急性がない限り、付き添いは原則不可。

桃子に会えないとしても、両親どちらかに行き会えれば、状況が分かるはずだ。

『仲村 鍼灸・整体院』と記された看板の横に、父親のワンボックスカーがあるのを見て、匠刀の心臓はドクンと強く鼓動する。

ピンポーン。
鍼灸院に灯りがついてないことを確認した匠刀は、自宅のインターホンを鳴らした。

「はい」
「こんばんは、匠刀です」
「……こんばんは」
「あの、桃子と連絡取れないんですけど、桃子は無事ですか?!」

インターホンに出たのは父親だった。
すると、ガチャッと玄関ドアが開き、桃子の母親が現れた。

「寒いから、上がって」

明らかに着信拒否されたような状況だったから、門前払いをされると思っていた。
インターホン越しでもいい。
桃子の安否だけ確認できれば、それでいいとさえ思っていた。