辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました

そのせいで普段から、顔のいい男を見慣れていたのである。

(あの人がもしかしたら結婚するかもしれない人……)

 見るからに最高級の仕立てだとわかる正装は黒一色だが、陰鬱な印象を与えない。

 袖や襟に金糸で紋様が描かれており、本物の金でできていると思われるカフスボタンや装飾がささやかながらも存在を主張しているからだろう。

 なによりひと際目をひくのは、彼の衣装や立ち居振る舞いではなく、その瞳だ。

 本物の炎が宿っているのかと思われるような色は、鮮烈な夕陽の色。炎の妖精の加護を持つ王族特有の火蛋白石(ファイアオパール)の瞳は、エモニエの至宝とも呼ばれている。