辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました

 ひとり残されたリティは目の前の扉を見つめると、ゆっくり深呼吸して自分を落ち着かせる。

(妃になったら、王都を故郷だと思うようにと言われた。選考が終わるまで家族には会えないし、故郷を懐かしむ持ち物も許されていない。ここから私の新しい一日が始まるんだわ)

 不安がないと言えば嘘になる。

 しかし同じくらい、彼女はわくわくしていた。

(今まで一度もクアトリーを出たことがなかった。王都での生活はどんな感じなのかしら? 年の近い貴族の子に会うのも初めて)

 リティは少ない荷物を詰めたバッグを持ち直すと、緊張で微かに震える手を扉に近付けた。

 勇気を出して軽くノックし、真鍮のノブを掴む。