(本当はあの日、戦鳥の背でするはずだったキスをちゃんとしたい。だけど、私はランベール様の妃にはなれないから……)

 リティはそっとランベールの頬に唇を押し当てた。

 驚いたランベールが身じろぎするも、動けないようにぎゅっと腕に力を込める。

「リティ」

「だめです」

 声が、震える。

「……見ないでください」

 リティはたとえ頬でも、キスをしなければよかったと後悔した。

 唇を噛み締めて泣きながら、自分のものにはなってくれない想い人の体温を身体に刻もうとする。

(ランベール様が好き)

 本当は、こうして抱き合うのもデルフィーヌに対して不義理だろう。

 きっとランベールも同じことを思っているだろうが、ふたりはお互いを離せなかった。