辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました

 イーゼル卿は大して悪びれた様子を見せなかった。

「君を襲ったとされる騎士は、当時の記憶を失くしている。君の証言だけがすべてというわけだな」

「えっ、そんな……」

(強く蹴りすぎた? それとも……)

 ふと、リティは今さら昨夜見た奇妙な現象を思い出した。

 あんなにびくともしなかった男が、突然動かなくなったことだ。

「そもそもなぜ、夜遅くに外を出歩いていた?」

 話が変わってしまい、気づきを伝えられなくなる。

 イーゼル卿の威圧的な視線に逆らおうとは思えず、リティはうつむいた。