辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました

「いるわ! 大丈夫よ!」

 周囲の雑音に負けない大声で返したリティは、デルフィーヌの声がしたほうへと急いだ。(これは試験なんかじゃないわ……)

 なにかと小競り合いが絶えないクアトリーで育ったリティでさえ、こんな混乱に巻き込まれた経験はない。

(エリーズ……先に逃げているわよね?)

 人が密集し、背中に汗が伝うほど暑いというのに、リティの手はひどく冷たくなっていた。



 デルフィーヌの的確な指示と誘導によって、リティは無事に大広間にたどり着いた。

 そこには既に大勢の候補者が集まっており、怯えたすすり泣きがそこかしこに響いている。