辺境の貧乏令嬢ですが、次期国王の王妃候補に選ばれてしまいました

 きっぱり言う妹を前に、無骨なトリスタンは唇を引き結び、皮肉っぽい苦笑を浮かべていたジョエルが小さく息を吐く。

「だってさ、トリスタン。いつの間にか俺たちのかわいい妹は、兄の助言を必要としなくなったようだ」

「……耐えられない」

「それでもティルアーク家の後継ぎか? まあ、俺も今すぐ王都を氷漬けにしたい気分だけどな」

 リティはふたりの兄が離れていくのを見送ることなく、再び歩き出した。

 食堂に立ち寄り、なんとも寂しい食糧庫から鹿肉の切れ端を調達する。

 使用人の姿はない。

 常に財政状況がかつかつのティルアーク家では、たった三人しか雇っていないからだ。